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銅メッキ |
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銅メッキとは
銅は酸素を含んだ水に簡単に侵され、亜酸化銅(I)(Cu2O)として腐食する。従って、装飾めっき分野では、銅単独で用いることは殆どなく、ニッケルあるいはニッケル+クロムめっきの下地めっきとして利用されてきた。一方、工業用では、その伝導性及び均一電着性の特性を活かしたプリント配線板のスルーホールめっきや、さらに加工性、経済性等の特性を活かした精密電鋳、印刷ロール、浸炭防止等に広く利用されている。
現在実用化されているめっき浴は硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、シアン化銅浴、ホウフッ化銅浴等がある。それぞれの浴の特性と主な用途は表-1に示す。硫酸銅浴、ホウフッ化銅浴の様な酸性浴は、一般的に拡散係数が大きく、高濃度浴が使用できるため高速度めっきに適しており、また加工性が良いため、電鋳、印刷ロールへの厚めっきに利用される。
一方、アルカリ性浴のシアン化銅浴、ピロリン酸銅浴は均一電着性に優れ、その特性を利用して広く利用されている。シアン化銅浴は、複雑な形状の亜鉛、アルミニウムダイカストの下地めっきとして利用されている。ピロリン酸銅浴は均一電着性に加えて、物性(伸び×引張強さ)が大きいため、プリント配線板のスルーホールめっきとして利用されており、特に信頼性を要求する産業基板で威力を発揮している。
【表-1 各種銅めっきの特性と主用途】
現在実用化されているめっき浴は硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、シアン化銅浴、ホウフッ化銅浴等がある。それぞれの浴の特性と主な用途は表-1に示す。硫酸銅浴、ホウフッ化銅浴の様な酸性浴は、一般的に拡散係数が大きく、高濃度浴が使用できるため高速度めっきに適しており、また加工性が良いため、電鋳、印刷ロールへの厚めっきに利用される。
一方、アルカリ性浴のシアン化銅浴、ピロリン酸銅浴は均一電着性に優れ、その特性を利用して広く利用されている。シアン化銅浴は、複雑な形状の亜鉛、アルミニウムダイカストの下地めっきとして利用されている。ピロリン酸銅浴は均一電着性に加えて、物性(伸び×引張強さ)が大きいため、プリント配線板のスルーホールめっきとして利用されており、特に信頼性を要求する産業基板で威力を発揮している。
【表-1 各種銅めっきの特性と主用途】
銅めっき浴の種類 | めっき皮膜の特性 | 主な利用分野 | |
酸性浴 | 硫酸銅浴 | 光沢、平滑性に優れる。皮膜は柔らかく、添加剤の改良が一段と進んだため、良好な物性が得られる様になった。 | スルーホールめっき、電鋳、印刷ロール、浸炭防止、プラスチックへの下地めっき。 |
ホウフッ化銅浴 | 高速度めっきが可能。皮膜の伸び率は最小。 | 電鋳、印刷ロール。 | |
アルカリ性浴 | シアン化銅浴 | 鉄、亜鉛ダイカストに直接めっき可能。光沢めっきは外観、平滑性良好。 | ストライク用、下地めっき用(防錆)、無光沢めっきは浸炭防止や工業用厚付け。 |
ピロリン酸銅浴 | 均一電着性に優れ、皮膜の結晶構緻密。引張強さや伸びが最も良好。高周波電流の伝送損失も最も小さい。 | 電波管、スルーホールめっき、電鋳。 |
硫酸銅浴について
硫酸銅浴は、硫酸銅と硫酸という安価な工業原料を基本成分とするため、他の銅めっきに比べて建浴費が最も安く、かつ管理が簡単であるため、厚付けめっきや電鋳の目的に広く用いられてきた。しかし硫酸銅浴は他の銅めっきに比べて以下の様な欠点がある。
1)めっき液の腐食性が強い。
2)鉄素地や亜鉛ダイカスト素地には銅が置換析出するので、直接めっきが出来ない。
3)均一電着性がシアン化銅めっきに及ばない。
しかし、良好な物性を有した光沢と優れた平滑作用のある添加剤の出現で利用率が高まった。逆に硫酸銅浴の利点は、伸びのある純度の高い銅皮膜が得られること、浴の管理が容易なこと、排水処理が容易なこと等が上げられる。なお、硫酸銅浴は強酸性であるため、設備等については十分配慮すること。設備に付いては表-2を参照。
【表-2 硫酸銅めっきの設備等】
1)めっき液の腐食性が強い。
2)鉄素地や亜鉛ダイカスト素地には銅が置換析出するので、直接めっきが出来ない。
3)均一電着性がシアン化銅めっきに及ばない。
しかし、良好な物性を有した光沢と優れた平滑作用のある添加剤の出現で利用率が高まった。逆に硫酸銅浴の利点は、伸びのある純度の高い銅皮膜が得られること、浴の管理が容易なこと、排水処理が容易なこと等が上げられる。なお、硫酸銅浴は強酸性であるため、設備等については十分配慮すること。設備に付いては表-2を参照。
【表-2 硫酸銅めっきの設備等】
設備名 | 材質等 |
めっき槽 | ゴムライニング鉄槽、PVC槽、FRP槽 |
陽極 | 含リン銅(チタンケースは、ハイスロー欲では不動態化済みであること) |
電源 | 直流 10V |
ろ過機 | 耐酸性のもの |
加熱・冷却 | 必要 |
攪拌 | 空気攪拌0.3〜0.6m3/m3 |
排水処理 | 酸系統へ |
硫酸銅浴の主成分は硫酸銅と硫酸であるが、用途により以下の2浴に大別される。浴の基本組成は表-3に示す。
1)普通浴:装飾用光沢硫酸銅めっきと無光沢あるいは半光沢にて使用される。電鋳等に応用される浴。
2)ハイスロー浴:プリント配線板のスルーホールめっきや、プラスチック上へのストライク銅めっきとして用いられる
【表-3 硫酸銅めっき浴の基本組成】
1)普通浴:装飾用光沢硫酸銅めっきと無光沢あるいは半光沢にて使用される。電鋳等に応用される浴。
2)ハイスロー浴:プリント配線板のスルーホールめっきや、プラスチック上へのストライク銅めっきとして用いられる
【表-3 硫酸銅めっき浴の基本組成】
成分/めっき浴 | 普通浴 | ハイスロー浴 |
硫酸銅(Cu2SO4・5H2O) g/l | 150〜250 | 45〜100 |
硫酸(H2SO4) g/l | 30〜100 | 160〜210 |
塩素イオン (Cl-) mg/l | 5〜80 | 20〜80 |
無光沢硫酸銅メッキ
無光沢硫酸銅めっきは、浴組成が単純で建浴費も安く、管理が容易である。めっき皮膜は柔らかく、伸び率が高いので表面の切削や研磨などの二次加工が容易である。主に電鋳、グラビア印刷用などの各種ロール、プリント配線板用銅箔の製造及び浸炭防止などに広く採用されている。また、梨地めっきの下地としても良く用いられる。
一般的に無光沢硫酸銅めっきは、光沢硫酸銅めっきに比べて均一電着性が悪いため、めっきをする素材の形状に応じた浴組成の選定や、設備上の工夫が必要である。表-4に無光沢硫酸銅浴の一般的な組成を示す。
【表-4 無光沢硫酸銅浴の種類】
一般的に無光沢硫酸銅めっきは、光沢硫酸銅めっきに比べて均一電着性が悪いため、めっきをする素材の形状に応じた浴組成の選定や、設備上の工夫が必要である。表-4に無光沢硫酸銅浴の一般的な組成を示す。
【表-4 無光沢硫酸銅浴の種類】
成分/用途 | 一般用 | 電鋳用 | 梨地用 | 半光沢浴 |
硫酸銅 | 210 g/l | 240 g/l | 50 g/l | 250 g/l |
硫酸 | 53 g/l | 60〜75 g/l | 180 g/l | 11 g/l |
リン酸など | - | - | 適量 | - |
チオ尿素など添加剤 | - | 適量 | 適量 | 適量 |
光沢硫酸銅メッキ
様々な光沢剤が開発された事により、鏡面光沢の外観、高い平滑化作用、良好なめっき皮膜の物性等の特長を兼ね備える事が可能になった。プラスチック上の初段の電気めっきとして必須の条件を備えているため、広く利用されている。表-5に光沢硫酸銅浴の基本組成と作業条件を示す。
【表-5 光沢硫酸銅めっきの浴組成と作業条件】
【表-5 光沢硫酸銅めっきの浴組成と作業条件】
浴組成 | 作業条件 | ||
硫酸銅 | 180〜240 g/l | 浴温 | 22〜32℃ |
硫酸 | 45〜90 g/l | 陰極電流密度 | 2〜6 A/dm2 |
塩素イオン | 20〜80 g/l | 陽極電流密度 | 1.5〜3 A/dm2 |
光沢剤 | 適量 | 浴電圧 | 3〜9 A/dm2 |
ろ過 | 活性炭を含まない連続ろ過 | ||
陽極 | 含リン銅 | ||
アノードバック | PPやアクリル製の物 |
ハイスロー硫酸銅浴
硫酸銅めっき浴は、一般的に均一電着性に乏しいが、析出される銅は伸びがよく皮膜の物性としてはスルーホールめっきには望ましい浴である。しかし、均一電着性の面ではピロリン酸銅めっきに劣っていたためアスペクト比の大きな高密度基板には不向きであった。
そこで開発されたのがハイスロー硫酸銅浴である。従来の浴に比べ、低金属濃度、高硫酸、添加剤使用という条件で使用される。表-6にハイスロー硫酸銅浴の浴組成と作業条件を示す。
【表-6 ハイスロー硫酸銅浴の浴組成と作業条件】
そこで開発されたのがハイスロー硫酸銅浴である。従来の浴に比べ、低金属濃度、高硫酸、添加剤使用という条件で使用される。表-6にハイスロー硫酸銅浴の浴組成と作業条件を示す。
【表-6 ハイスロー硫酸銅浴の浴組成と作業条件】
浴組成 | 作業条件 | ||
硫酸銅 | 60〜100g/l | 浴温 | 22〜30℃ |
硫酸 | 150〜225g/l | 陰極電流密度 | 2〜4 A/dm2 |
塩素イオン | 0.02〜0.08g/l | 攪拌 | 空気攪拌、カソードロッカー |
添加剤 | 適量 | 陽極 | 含リン銅 |
ろ過 | 活性炭を含まない連続ろ過 |
シアン化銅浴の特長
シアン化銅浴はシアン化銅錯イオンと、過剰の遊離シアン化アルカリを含む液から電着され、酸性浴に比べ高い過電圧のもとでめっきされるため緻密なめっき層が得られ、均一電着性に優れている。金属銅への還元電位が低いため、鉄鋼や亜鉛ダイカスト、黄銅などの表面へも銅の置換析出が起こらない。また、複雑な形状の品物の内部や、ピンホールなどの素材欠陥の内部までもめっきがよく付きまわるため、他種のめっきに先立って素材に施されるストライクとして広く利用されている。シアン化銅ストライクを行うと、素材が密着性の良い銅皮膜で覆われ、後のめっきの付きまわりが改善されると同時に耐食性も向上する。さらに、めっき浴中への素材金属の溶解も防ぐことができ、浴の汚染が防止できる。浴中のシアン化アルカリは、素材表面についた油などの汚れを洗浄しその表面を電気化学的に活性化させる作用をもつため、前処理不足も補う効果もある。
シアン化銅浴の成分と働き
【1)銅分】
銅濃度の増加は遊離シアンの減少、逆に銅濃度の減少は遊離シアンの増加と大体同様な効果を示す。銅濃度の増加は、陰極及び陽極効率を高め、高電流密度で高能率の作業を可能にする。
【2)遊離シアン化アルカリ】
陽極の溶解を円滑に行うために必要。液温によりより著しく影響をうけ、高温になるとシアン化銅錯イオンの解離が促進されるため遊離シアン濃度が高くなる。遊離シアン濃度が極端に低下すると、析出結晶が粗大となり、密着性が悪くなる。陽極においては、不導体皮膜を生成する。
【3)水酸化アルカリ】
水酸化カリウムまたはナトリウムが使用され、その作用は主に導電率の改善である。過剰の水酸化アルカリの添加は炭酸アルカリの生成が多くなり、逆に水酸化アルカリが少なすぎるとシアン化アルカリが不安定になる。目的に応じたpH調整が必要である。
銅濃度の増加は遊離シアンの減少、逆に銅濃度の減少は遊離シアンの増加と大体同様な効果を示す。銅濃度の増加は、陰極及び陽極効率を高め、高電流密度で高能率の作業を可能にする。
【2)遊離シアン化アルカリ】
陽極の溶解を円滑に行うために必要。液温によりより著しく影響をうけ、高温になるとシアン化銅錯イオンの解離が促進されるため遊離シアン濃度が高くなる。遊離シアン濃度が極端に低下すると、析出結晶が粗大となり、密着性が悪くなる。陽極においては、不導体皮膜を生成する。
【3)水酸化アルカリ】
水酸化カリウムまたはナトリウムが使用され、その作用は主に導電率の改善である。過剰の水酸化アルカリの添加は炭酸アルカリの生成が多くなり、逆に水酸化アルカリが少なすぎるとシアン化アルカリが不安定になる。目的に応じたpH調整が必要である。
【4)カリウムイオンとナトリウムイオン】
一般にシアン化アルカリ、水酸化アルカリの使用ではカリウムイオンの方が優れた作用を示す。伝導率・平滑能の改善、光沢めっきでは光沢の改善と範囲を広くする。さらに陰極効率もカリウムの方が優れているため、浴のpH調整には水酸化カリウムを添加するのが望ましい。
【5)炭酸アルカリ】
炭酸根は添加しなくても遊離シアン化アルカリ、水酸化アルカリなどが空気中の酸素や炭酸ガスとの接触、電解酸化などで徐々に生成・蓄積される。炭酸アルカリの適量の存在は伝導率を高めるために必要である。しかし、過剰になると電流効率や導電率の低下、粘度の上昇による汲み出しの増加に繋がるため一定に管理する必要がある。過剰に生成してしまった場合は液温を10℃以下に冷却し炭酸塩を晶出除去するか水酸化バリウムなどの薬品で除去する。しかし、バリウム塩での炭酸塩除去はpHを上昇させるため酒石酸により中和する必要がある。酒石酸による中和はシアン化水素を発生させるため十分注意する。
【6)酒石酸塩】
不可欠な成分ではないが、遊離シアン濃度を低くして使用する場合、陽極溶解を改善するためにロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、酒石酸カリウムなどを使用する。
一般にシアン化アルカリ、水酸化アルカリの使用ではカリウムイオンの方が優れた作用を示す。伝導率・平滑能の改善、光沢めっきでは光沢の改善と範囲を広くする。さらに陰極効率もカリウムの方が優れているため、浴のpH調整には水酸化カリウムを添加するのが望ましい。
【5)炭酸アルカリ】
炭酸根は添加しなくても遊離シアン化アルカリ、水酸化アルカリなどが空気中の酸素や炭酸ガスとの接触、電解酸化などで徐々に生成・蓄積される。炭酸アルカリの適量の存在は伝導率を高めるために必要である。しかし、過剰になると電流効率や導電率の低下、粘度の上昇による汲み出しの増加に繋がるため一定に管理する必要がある。過剰に生成してしまった場合は液温を10℃以下に冷却し炭酸塩を晶出除去するか水酸化バリウムなどの薬品で除去する。しかし、バリウム塩での炭酸塩除去はpHを上昇させるため酒石酸により中和する必要がある。酒石酸による中和はシアン化水素を発生させるため十分注意する。
【6)酒石酸塩】
不可欠な成分ではないが、遊離シアン濃度を低くして使用する場合、陽極溶解を改善するためにロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、酒石酸カリウムなどを使用する。
シアン化銅浴の種類
低濃度浴は主に銅ストライクとして、ロッシェル塩浴は陽極の溶解性を向上させるため、中濃度浴は光沢シアン化銅浴として最も多く銅下地めっきに、高濃度浴は、高電流密度で作業ができるため、厚いめっきを得るため場合に用いられる。シアン化銅浴の組成、作業条件、用途は表-7に示す。
【表-7 シアン化銅めっき浴の種類】
【表-7 シアン化銅めっき浴の種類】
項目/種類 | 低濃度浴 | ロッシェル塩浴 | 中濃度浴 | 高濃度浴 | |
ナトリウム浴 | カリウム浴 | ||||
(組成) | |||||
シアン化銅(g/l) | 23 | 26 | 41 | 100 | 60 |
シアン化ナトリウム(g/l) | 34 | 35 | 56 | 125 | 94 |
水酸化ナトリウム(g/l) | - | - | 15 | 30 | 42 |
炭酸ナトリウム(g/l) | 15 | 30 | - | 15 | 15 |
ロッシェル塩(g/l) | - | 45 | - | - | - |
添加剤 | - | (使用) | (使用) | (使用) | (使用) |
(作業条件) | |||||
温度(℃) | 32〜44 | 54〜72 | 60〜71 | 76〜82 | 76〜82 |
電流密度(A/dm2) | 1〜15 | 2〜4 | 2〜4 | 3〜6 | 3〜6 |
陽極面積(対陰極) | 2:1 | 2:1 | 2:1 | 2:1 | 2:1 |
攪拌 | カソードロッカー | カソードロッカー及び空気攪拌 | 左に同じ | 左に同じ | 左に同じ |
ろ過 | 連続ろ過 | 左に同じ | 左に同じ | 左に同じ | 左に同じ |
用途 | ストライク | ストライク又は薄いめっき | 通常のめっき | 光沢めっき 厚いめっき |
左に同じ |
目標膜厚(μm) | 1.3〜2.5 | 1.3〜7.5 | 2.5〜25 | 7.5〜50 | 7.5〜50 |
期待電流効率(%) | 30 | 50 | 60〜80 | 100 | 100 |